MCPとは?仕組みと始め方をわかりやすく解説【2026年9月】

MCPとは?AIと社内システムをつなぐ標準規格をわかりやすく解説【2026年版】

執筆・編集:株式会社Nexa 編集部(下書きと機械検査はAI、公開前に人が確認)/約29分で読めます。公式ドキュメント・公式発表などの一次情報を確認したうえで執筆・更新しています。AIツールの仕様や料金は変わることがあるため、導入判断の前に各公式サイトの最新情報もご確認ください。記事の作り方と検査の方針

MCP(Model Context Protocol)とは、AIアプリを社内システムや外部サービスにつなぐための共通規格(オープン標準)です。接続の作法が揃うため、一度作った連携を、MCPに対応した別のAIツールからもそのまま使えます。

  • 仕組み: AIアプリ(ホスト)の中のクライアントが、接続先ごとのMCPサーバーと1対1でつながり、データの参照や操作の実行を依頼する
  • 始め方: いま使っているAIツールに、提供元がはっきりしたMCPサーバーを1つ、読み取り専用の範囲で接続して試す
  • 最新の仕様: 現行の版は2026-07-28(2026年7月28日公開)。通信がステートレス(状態を持たない方式)になり、サーバーを増設しやすくなった

対象: AI活用を検討する経営者・DX推進担当・情報システム部門

今日やること: 自社で使っているAIツールがMCPに対応しているか公式ドキュメントで確認する

確認日: 2026年9月28日(MCP公式サイトの仕様・変更履歴・公式ブログを確認)

この記事の著者
株式会社Nexa 代表取締役川島 陸

一橋大学経済学部卒業後、フォーティエンスコンサルティング株式会社(旧 株式会社クニエ)にて法人向けAI導入支援等を経験。独立後、AI系メディア運営やDify/n8nの導入支援を経て、株式会社Nexaを創業。法人向けAI研修・AI導入支援・AI関連メディア運営を手掛ける。

MCP(Model Context Protocol)とは、AIアプリを社内システムや外部サービスにつなぐための共通規格です。Anthropicが2024年11月25日にオープンソースとして公開し、2025年12月9日にLinux Foundation傘下の組織へ寄贈されました。

便利になる点は、一度作った連携を、MCPに対応した別のAIツールからもそのまま使えることです。接続の作法がAIツールごとに違っていた状態から、共通の作法に揃った状態へ変わります。

まず要点を表にまとめます。

知りたいこと 答え 詳しい説明
MCPとは AIアプリと外部システムをつなぐ共通規格。公式は「AIアプリケーションにとってのUSB-Cポート」と表現 定義と解決する課題
仕組み ホスト(AIアプリ)・クライアント・サーバーの3者で構成。クライアントとサーバーは1対1で接続する 仕組み
便利になる点 必要な連携の数がM×N個からM+N個に減り、AIツールを替えても連携を使い回せる 導入のメリット
始め方 ①既存のAIツールで公式のサーバーを試す ②社内データを1つ、読み取り専用で公開する ③権限とログのルールを決める 3ステップ
最新の仕様 2026-07-28版(2026年7月28日公開)。1つ前は2025-11-25版 最新仕様の要点

本記事では、MCPの定義と仕組み、業界標準になるまでの経緯、企業が導入を検討するときの判断材料と始め方を先に説明します。仕様の細かい変更点は、開発・運用を担当する方に向けて記事の後半にまとめました。技術用語はその都度説明します。

ツールごとの設定手順や、個別のテーマは次の記事で扱っています。

MCPとは?AIアプリと外部システムをつなぐ「USB-Cポート」

MCPの定義 — AIを外部システムに接続するオープン標準

MCPの公式ドキュメントは、MCPを次のように定義しています。

MCP(Model Context Protocol)は、AIアプリケーションを外部システムに接続するためのオープンソース標準です。

そして公式は、MCPを 「AIアプリケーションにとってのUSB-Cポート」 に喩えています。USB-Cが「どのメーカーの機器でも、同じ形状のポートで接続できる」状態を作ったように、MCPは「どのAIアプリからでも、同じ作法で外部システムにつなげる」状態を作ります。

ここでいう外部システムとは、具体的には次のようなものです。

分類 具体例
データソース ローカルのファイル、社内データベース、ドキュメント管理システム
ツール 検索エンジン、計算処理、外部サービスのAPI
ワークフロー 定型業務向けに設計された専用プロンプト

たとえばAIアシスタントがGoogleカレンダーやNotionを参照して予定を調整する、あるいはAIコーディングツールがFigmaのデザインを読み取ってWebアプリを生成する、といった連携がMCPによって実現されます。いずれも公式ドキュメントが挙げている例です。

なお、AnthropicのAIコーディングツールであるClaude CodeもMCPホストの代表例です。Claude Codeとは、ターミナル上で対話しながらコードの生成・修正・レビューを行えるツールを指します(Claude Codeの詳細はこちら →)。

MCPが解決する「M×N問題」

MCPの価値は、統合コストの構造を変える点にあります。

MCPが登場する前は、AIアプリごと・接続先ごとに個別の連携を実装する必要がありました。AIアプリがM個、つなぎたい外部システムがN個あれば、必要な実装は理論上 M×N個 です。AIアプリを1つ増やすたびに、既存のN個すべてに対する接続を作り直すことになります。

MCPはこの間に共通の規格を挟みます。各AIアプリはMCPに1回対応すればよく、各外部システムもMCPサーバーを1つ用意すればよい。必要な実装は M+N個 に減ります。

MCP導入前 MCP導入後
必要な実装数 M×N M+N
AIツールを1つ追加 N個の連携を新規実装 MCP対応のみ
接続先を1つ追加 M個のAIアプリを個別改修 MCPサーバーを1つ公開

AIツールの入れ替わりが激しい現在、この差は「一度作った連携資産を、ツールを変えても使い回せるかどうか」に直結します。

MCPが扱わない領域

誤解を避けるために、MCPの守備範囲も押さえておきます。公式ドキュメントは次のように明記しています。

MCPはコンテキスト交換のためのプロトコルのみを対象としており、AIアプリケーションがLLMをどのように使うか、提供されたコンテキストをどう管理するかは規定しない。

つまりMCPは 「つなぎ方の共通ルール」だけを決める規格です。どのAIモデルを使うか、取得したデータをどう扱うか、プロンプトをどう設計するかは、各アプリケーションの裁量に委ねられています。MCPに対応すれば自動的にAIの精度が上がる、というものではありません。

明日からできること: 自社で使っているAIツールがMCPに対応しているか、公式ドキュメントで確認してみてください。

なぜMCPが「業界標準」になったのか

Anthropicの発表からLinux Foundation傘下へ

MCPは、公開から約1年で管理の体制が大きく変わりました。

時期 出来事
2024年11月25日 Anthropicがオープンソースの規格としてMCPを公開
2025年3月26日 OpenAIのサム・アルトマンCEOが自社製品での対応を表明。Agents SDKから対応を始め、ChatGPTのデスクトップアプリなどは後日対応と説明(TechCrunchの報道)
2025年4月9日 Google DeepMindのデミス・ハサビスCEOが、GeminiのモデルとSDKでの対応を表明(TechCrunchの報道)
2025年12月9日 AnthropicがMCPをAgentic AI Foundationへ寄贈
2026年1月26日 画面を表示する拡張機能「MCP Apps」を、最初の公式拡張として公開
2026年7月28日 現行の仕様である2026-07-28版を公開

転換点は2025年12月の寄贈です。Agentic AI Foundation(AAIF)は、Linux Foundation傘下の directed fund(特定用途の基金) として設立された組織で、Anthropic・Block・OpenAIが共同設立し、Google・Microsoft・Amazon Web Services・Cloudflare・Bloombergが支援しています。

競合するAI企業同士が同じ基盤を支える構図になったことで、MCPは「Anthropicが管理するプロトコル」からベンダー中立の業界インフラへと性格を変えました。AAIFにはMCPと並び、Blockのgoose、OpenAIのAGENTS.mdが発足プロジェクトとして参加しています。

企業がAI連携基盤を選ぶうえで、この点は重要です。特定ベンダーの製品戦略に依存する規格ではなく、中立の財団が管理する規格である、という前提ができたからです。なお公式ブログによると、仕様の技術的な方針は寄贈後も引き続きMCPのメンテナーが決めています。

採用状況 — 公表元と時点つきの数字

採用規模の数字は、いずれもMCPの提供側が公表したものです。時点と公表元を分けて示します。

時点 公表元 公表された数字
2025年12月9日(寄贈の発表時) Anthropicの発表、MCP公式ブログ SDKの月間ダウンロード数は9,700万超(PythonとTypeScriptの合計)。公開されている稼働中のMCPサーバーは1万超
2026年7月28日(2026-07-28版の公開時) MCP公式ブログ 主要SDK(Tier 1)の合計で、月間ダウンロード数は5億近く。TypeScriptとPythonのSDKは、それぞれ累計10億ダウンロードを超えた

第三者が検証した統計ではない点に注意してください。寄贈時のMCP公式ブログは、対応しているAIツールの例としてChatGPT、Claude、Cursor、Gemini、Microsoft Copilot、Visual Studio Codeを挙げています。

主要なAIツールが対応済みであることの意味

実務上重要なのは、主要なAIツールがすでに対応しているという事実です。MCPサーバーを1つ用意すれば、MCPに対応した複数のAIツールから呼び出せます。社内向けのAI連携を作るとき、「どのAIツールを全社標準にするか」を決め切る前に着手できる、という意味を持ちます。ただし対応する機能の範囲はツールごとに異なるため、使いたい機能に対応しているかは各ツールの公式ドキュメントで確認が必要です。


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MCPの仕組み — ホスト・クライアント・サーバーの3者構成

3つの登場人物

MCPはクライアント・サーバー型のアーキテクチャを採用しています。登場人物は3者です。

参加者 役割 具体例
MCPホスト 複数のMCPクライアントを調整・管理するAIアプリケーション Claude Code、Claude Desktop、Visual Studio Code
MCPクライアント MCPサーバーとの接続を維持し、コンテキストを取得するコンポーネント ホストが内部で生成する接続オブジェクト
MCPサーバー コンテキストをクライアントに提供するプログラム ファイルシステムサーバー、データベースサーバー、Sentry MCPサーバー

ポイントは、ホストがサーバー1つにつきクライアントを1つ生成し、専用の接続を張るという点です。

たとえばVisual Studio CodeがSentryのMCPサーバーに接続すると、そのためのMCPクライアントが1つ生成されます。続いてローカルのファイルシステムサーバーにも接続すると、さらにもう1つ別のクライアントが生成されます。接続先ごとに経路が分かれているため、サーバー単位で接続を管理できる構造です。

なお「MCPサーバー」という呼び方は、動作する場所を問いません。同じマシン上で動くものも、クラウド上で動くものも、どちらもMCPサーバーです。慣用的に前者を「ローカルMCPサーバー」、後者を「リモートMCPサーバー」と呼び分けます。サーバー側の種類や選び方は、MCPサーバーの解説記事で扱っています。

やり取りの流れ — 一覧を確認してから実行する

MCPサーバーは、Tools(実行できる操作)・Resources(参照できるデータ)・Prompts(定型の指示文)の3種類を公開できます。クライアントとサーバーは、JSON-RPC 2.0という形式のメッセージでやり取りします。ツールを使う場合の流れは次のとおりです。

  1. 一覧を問い合わせる: クライアントが tools/list を送り、「このサーバーでは何ができるか」を確認する
  2. 実行を依頼する: AIが使うツールを選び、クライアントが tools/call で実行を依頼する
  3. 結果を受け取る: サーバーが社内データベースやファイルを参照・操作し、実行結果を返す

AIアプリは、返ってきた実行結果を回答の材料(コンテキスト)として使います。この3段階が、接続先のサーバーごとに1対1の接続の中で行われます。

MCPの仕組み。AIアプリ内のMCPクライアントがMCPサーバーへ一覧の問い合わせと実行を依頼し、実行結果を受け取る
図1: ホストは接続先ごとに専用のクライアントを持ち、一覧の確認と実行の依頼を1対1の接続で行います。

データ層とトランスポート層

MCPは2つの層で構成されています。

層 役割
データ層 JSON-RPC 2.0ベースの通信プロトコル。対応する版と機能の確認(ディスカバリー)と、後述のプリミティブを定義する内側の層
トランスポート層 実際の通信路と認証を担当。接続確立・メッセージの区切り方・セキュアな通信を扱う外側の層

JSON-RPC 2.0とは、JSON形式でリモートの関数を呼び出すための軽量な規格です。「どの関数を、どんな引数で呼ぶか」を決まった形式のJSONで表現します。

この2層構造により、通信路が変わってもメッセージの形式は同一に保たれます。ローカル接続でもリモート接続でも、やり取りされるJSONは同じ形式です。

サーバーが提供する3つのプリミティブ(Tools / Resources / Prompts)

プリミティブとは、MCPで「クライアントとサーバーが互いに提供できるものの種類」を指す中核概念です。サーバー側は3種類を公開できます。

プリミティブ 内容 実務での例
Tools(ツール) AIが呼び出して実行できる関数 データベースへの問い合わせ、ファイル操作、外部APIの呼び出し
Resources(リソース) AIに文脈を与えるデータ源 ファイルの中身、データベースのレコード、APIのレスポンス
Prompts(プロンプト) 対話を構造化する再利用可能なテンプレート システムプロンプト、few-shot例

それぞれに、一覧を取得するメソッドと、中身を取得または実行するメソッドが定義されています。仕様書(2026-07-28版)でのメソッド名は次のとおりです。

プリミティブ 一覧の取得 中身の取得・実行
Tools tools/list tools/call(実行)
Resources resources/list、resources/templates/list resources/read(読み取り)
Prompts prompts/list prompts/get(取得)

公式の概要ページは取得系のメソッドを */get とまとめて表記していますが、リソースの読み取りは resources/read、プロンプトの取得は prompts/get が正しい名前です。

一覧はその都度問い合わせる設計のため、サーバー側でツールが増減しても、クライアントは一覧を取り直すことで反映できます。一覧が変わったことを知らせる通知(notifications/tools/list_changed)も用意されています。2026-07-28版では、通知を受け取りたいクライアントが subscriptions/listen で受信を申し込む方式です。

社内システムをMCP化する際は、この3分類が設計の出発点になります。「参照させたいデータはResources」「実行させたい操作はTools」と切り分けるだけで、設計の見通しが立ちます。

クライアントが提供するプリミティブ

逆に、クライアント側がサーバーに提供できるプリミティブもあります。

  • Elicitation: サーバーがユーザーに追加情報の入力や操作の確認を求める仕組み(elicitation/create)
  • Sampling(非推奨): サーバーがクライアント側のAIアプリにLLMの推論を依頼する仕組み(sampling/createMessage)
  • Logging(非推奨): サーバーがデバッグ・監視用のログメッセージをクライアントへ送る仕組み

SamplingとLoggingは、作業対象のフォルダをサーバーに伝えるRootsとあわせて、2026-07-28版で非推奨になりました。引き続き動作しますが、新しく実装する場合は採用を避けます。代わりの方法は変更点の詳細にまとめています。

2つのトランスポート(stdio / Streamable HTTP)

通信路は2種類が定義されています。

トランスポート 用途 特徴
stdio 同一マシン上のローカルプロセス間通信 標準入出力を使う。ネットワークのオーバーヘッドがなく高速
Streamable HTTP リモートサーバーとの通信 HTTP POSTに加え、必要に応じてServer-Sent Eventsでストリーミング。認証はBearerトークン・APIキー等に対応し、公式はOAuthの利用を推奨

社内データを扱うサーバーをローカルで動かすならstdio、複数の利用者で共有するサーバーを立てるならStreamable HTTPを選ぶ、という判断になります。以前の方式であるHTTP+SSEは非推奨で、公式はStreamable HTTPへの移行を案内しています。

Claude Codeでの具体的な設定手順は、別記事で詳しく解説しています(Claude Code MCPの設定と追加 →)。

明日からできること: 社内のどのデータをResourcesにし、どの操作をToolsにするかを棚卸ししてみてください。

2026年7月28日公開の最新仕様(2026-07-28版)— 要点

MCPの仕様は、日付を版の名前にして管理されています。公式サイトの「Versioning」ページは、現行(Current)の版を 2026-07-28 としています(2026年9月28日確認)。公開候補が2026年5月21日に確定し、2026年7月28日に正式公開されました。1つ前の版は2025-11-25です。

公式ブログは、公開候補の時点でこの版を「公開以来で最大の改訂」と表現しました。正式公開時の記事では、共同開発者のDavid Soria Parra氏が「リモートMCPの登場以来、最も重要なリリース」と述べています。

主な変更は次の4点です。

変更 内容 主に関係する人
ステートレス化 接続開始時の手続きとセッションIDを廃止。リクエスト1件ごとに必要な情報を載せる方式になり、サーバーを増設しやすくなった リモートのMCPサーバーを開発・運用する担当
拡張機能の枠組み 仕様の本体とは別に機能を追加する仕組みを正式に定めた。画面を表示するMCP Apps、長時間の処理を扱うTasksなどが拡張として提供される 新しい機能を使いたい開発担当
認可の強化 認可サーバーの発行元を検証するなど、OAuthの運用に合わせた変更が入った 認証基盤の担当
非推奨の方針 Roots・Sampling・Loggingが非推奨に。非推奨から削除までに最低12か月の期間を置く方針も定められた 既存の実装を保守する担当

MCPに対応したAIツールを利用するだけの立場であれば、仕様の版を直接意識する場面は多くありません。新しい版への対応は、AIツールとMCPサーバーの提供元が行うためです。

一方、自社でMCPサーバーやクライアントを開発・運用している場合は、移行の確認が必要です。仕様書の互換性の表では、旧方式にしか対応していないクライアントと、新方式にしか対応していないサーバーの組み合わせは接続に失敗するとされています。新旧の両方に対応する実装も認められているため、移行期間はその形で運用できます。

変更点の詳細と、移行が必要になる項目の一覧は、記事後半の【開発・運用担当向け】2026-07-28版の変更点の詳細にまとめました。

明日からできること: 利用中のMCPサーバーが、どの仕様バージョンに対応しているかを確認してください。

企業がMCPを導入するメリット

統合コストの構造的な削減

前述のM×N問題の解消が、そのまま費用対効果につながります。AI連携を個別実装で積み上げていくと、ツールを乗り換えるたびに作り直しが発生します。MCPを介して作った連携資産は、MCP対応のAIツールであれば横断して再利用できます。

MCPとは何が変わる規格かを示す比較。個別実装ではM×N個の連携が必要だが、MCPを挟むとM+N個に減り再利用できる
図2: 共通規格を挟むと、AIツールを入れ替えても一度作った連携をそのまま使い回せます。

ツール選定のロックイン回避

主要なAIツールが対応済みであることの実務的な意味は、AIツールの選定を後回しにできる点にあります。社内データをMCPサーバーとして公開しておけば、全社標準のAIツールが将来変わっても、接続部分を一から作り直す必要は小さくなります。

AIエージェントによる並行処理と組み合わせると、業務自動化の設計自由度はさらに広がります(Claude Codeのエージェント機能の解説 →)。

操作記録の形式を揃えやすい

MCPでは、AIが行う操作がJSON-RPCのリクエストとしてやり取りされます。公式ブログによると、MCP Appsの画面上の操作も、ツールを直接呼び出す場合と同じ経路を通ります。つまり 「AIが、いつ、どのツールを、どんな引数で呼んだか」を同じ形式で扱えるということです。

内部統制上、AIの操作履歴を説明できる状態を作れるかどうかは重要な論点です。個別実装の寄せ集めでは、連携ごとに記録の形式がばらばらになりがちです。MCPに揃えると、記録の形式を揃えやすくなります。ただし、記録をどこに保存し、誰が確認するかはMCPの仕様の範囲外で、導入する側が決める必要があります。

明日からできること: AI連携で「同じような実装を何度も作っている」箇所を洗い出してみてください。

導入前に押さえるべき3つの注意点

プロンプトインジェクションと信頼できないサーバー

プロンプトインジェクションとは、AIが読み込むデータの中に指示文を紛れ込ませ、本来の指示を上書きする攻撃を指します。MCPの文脈では、サーバーが返すツールの説明文やリソースの中身が攻撃経路になり得ます。

公式の仕様書も、この点に注意を促しています。ツールに付く補足情報(annotations)は、信頼できるサーバーのものを除いて信頼できない情報として扱うこと、ツールの実行を人が拒否できる仕組みを設けることが求められています。

対策の要点は、接続するMCPサーバーを提供元が信頼できるものに限定することです。Anthropicの発表では、公開されているMCPサーバーは2025年12月時点で1万を超えています。「便利そうだから」と出所不明のサーバーを接続するのは避けるべきです。

リスクの種類と対策の全体像は、MCPセキュリティ対策の記事で整理しています。Claude Codeを使う場合の設定は、Claude Codeのセキュリティ解説も参照してください。

権限設計 — 最小権限の原則

MCPサーバーには、接続先システムへの認証情報を渡すことになります。ここで渡す権限が広すぎると、AIの誤動作や前述の攻撃が成立したときの被害範囲がそのまま広がります。

  • 読み取りだけで足りる用途に、書き込み権限を渡さない
  • 本番データベースに直接つながず、参照用のレプリカやビューを経由させる
  • 部門・用途ごとに認証情報を分け、どのサーバーが何にアクセスできるかを台帳化する

2026-07-28版で認可まわりの変更が入ったのは、この領域の統制を既存の認証基盤に寄せるためです。

バージョン移行の計画

仕様が日付バージョンで進む以上、移行は定期的に発生します。2026-07-28版のように大きな改訂が入った場合、社内で動かしているサーバーとクライアントの双方に確認作業が必要です。

  • 利用中のサーバー・クライアントの対応バージョンを台帳化する
  • セッションIDに依存した処理や、非推奨機能(Roots / Sampling / Logging)を使っている実装を洗い出す
  • エラーコードを数値で直接判定している箇所を点検する

公式は今回、非推奨から削除までに最低12か月の期間を置く方針を定めました。今後は、移行の計画を立てやすくなります。

明日からできること: MCPサーバーに渡している認証情報の権限範囲を点検してください。

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何から始めるか — 3ステップ

MCPは、小さく試してから範囲を広げる進め方が向いています。順番は次の3ステップです。

STEP 1: 既存クライアントで公式サーバーを試す

すでに社内でAIツールを使っているなら、そのツールがMCPホストとして機能する可能性があります。まずは公式が提供するリファレンス実装のサーバー(ファイルシステム等)を1つ接続し、AIが外部データを参照して回答が変わる体験を確認します。ここまでは新規開発なしで到達できます。

公式のチュートリアルは、Claude Desktopにファイルシステムのサーバーを接続する手順を紹介しています。ファイルの操作は、実行前に利用者の承認を求める流れです。ツール別の手順は、Claudeアプリでの使い方とClaude Codeでの設定を参照してください。

STEP 2: 社内データ1つをリソース化する

次に、参照頻度が高く、機密性が比較的低いデータを1つ選んでMCPサーバー化します。製品マスタ、社内規程、FAQなどが典型です。Toolsではなく Resourcesから始めるのが安全です。読み取り専用であれば、AIの誤動作による書き換えリスクがありません。サーバーの作り方と選び方は、MCPサーバーの解説記事で扱っています。

STEP 3: 権限とログの運用ルールを決める

技術的に動くことを確認したら、運用ルールを固めます。

  • 接続を許可するMCPサーバーの承認プロセス
  • 認証情報の権限範囲と棚卸しの頻度
  • JSON-RPCのやり取りをどこに保存し、誰が確認するか

この3点を決めてから利用範囲を広げると、後戻りが発生しにくくなります。

MCPを企業に導入する3ステップ。公式サーバーの試用、社内データ1つのリソース化、権限とログの運用ルール決定の順に進める
図3: 読み取り専用のデータから小さく始め、運用ルールを固めてから対象を広げます。

【開発・運用担当向け】2026-07-28版の変更点の詳細

ここからは、MCPサーバーやクライアントを開発・運用している方に向けた内容です。2026-07-28版の変更点を、公式の変更履歴(Key Changes)と公式ブログをもとに整理します。確認日は2026年9月28日です。

ステートレス化 — 接続開始の手続きとセッションの廃止

最も大きな変更が、プロトコルの段階でのセッション管理の廃止です。

  • 接続開始時の initialize / notifications/initialized のやり取りと、Mcp-Session-Id ヘッダを廃止
  • プロトコルの版とクライアントの対応機能は、毎回のリクエストの _meta フィールドに載せる
  • サーバーが対応する版と機能は、新設の server/discover で確認できる。サーバー側の実装は必須、クライアントからの呼び出しは任意
  • どのリクエストも、スティッキーセッションなしで任意のサーバーインスタンスへ振り分けられる

スティッキーセッションとは「同じ利用者のリクエストを、必ず同じサーバーへ送り続ける」仕組みのことです。これが不要になると、一般的なHTTPのロードバランサーの背後にMCPサーバーを並べて水平スケールできるようになります。利用者数が増えたときにサーバーを増設して対応できる、という運用上の意味を持ちます。

公式ブログは、プロトコルがセッションを持たなくなっても、アプリケーションまで状態を持てなくなるわけではないと補足しています。サーバーがツールの結果として明示的な識別子(ハンドル)を発行し、モデルがそれを次のツール呼び出しの引数として渡す設計にすれば、状態を持つ処理を引き続き実現できます。

サーバーからの問い合わせはMRTRに変更

これまで、ユーザーへの確認(elicitation/create)などは、サーバーからクライアントへリクエストを送る形でした。この方式は、接続を開いたままにしておく必要があります。

2026-07-28版では、Multi Round-Trip Requests(MRTR)という方式に置き換わりました。サーバーは resultType: "input_required" を付けた結果を返し、必要な情報を伝えます。クライアントは、回答を inputResponses に入れて元のリクエストを送り直します。あわせて、すべての結果に resultType フィールドが必須になりました。

ヘッダーでの振り分けと、一覧のキャッシュ

  • Streamable HTTPのPOSTリクエストに Mcp-Method / Mcp-Name ヘッダが必須になった。ゲートウェイは、本文のJSONを解析せずにヘッダーで振り分けや流量の制御ができる
  • tools/list・prompts/list・resources/list・resources/read・resources/templates/list の結果に、ttlMs(有効期間の目安)と cacheScope(共有してよい範囲)が必須になった
  • _meta に載せるトレース情報(traceparent など)のキー名を文書化。処理を横断した追跡(分散トレーシング)をしやすくなった

拡張機能 — MCP AppsとTasks

2026-07-28版では、仕様の本体とは別に機能を追加する「拡張機能」の枠組みが正式に定められました。

MCP Appsは、サーバーが用意した画面をAIアプリの中に表示する拡張です。2026年1月26日に、最初の公式拡張として公開されています。

  • サンドボックス化されたiframe内で、操作できるHTMLの画面を表示する
  • ツールはUIのテンプレートを事前に宣言する。ホストは実行前に、取得・キャッシュ・セキュリティの確認ができる
  • 画面上の操作も、ツールを直接呼び出す場合と同じJSON-RPCの経路を通る

Tasksは、時間のかかる処理の結果を後から取得するための仕組みです。2025-11-25版では実験的な機能として仕様の本体に含まれていましたが、2026-07-28版で公式の拡張(io.modelcontextprotocol/tasks)に移りました。

  • クライアントは tasks/get で状況を確認し、tasks/update で追加の入力を渡し、tasks/cancel で中止する
  • 結果が返るまで待つ tasks/result は、tasks/get による確認に置き換え。tasks/list は削除
  • 2025-11-25版の実験的なTasksを使っている実装は移行が必要

認可の強化

正式公開時の公式ブログは、認可まわりの変更として次の4点を挙げています。

  • 認可サーバーは、RFC 9207に沿って iss パラメータを返すことが推奨される。クライアントは、iss がある場合に必ず検証する(mix-up攻撃の防止)
  • クライアントは、動的クライアント登録の際に application_type を指定する
  • クライアントの認証情報は、発行した認可サーバーに紐づける。別の認可サーバーでは使い回さない
  • 動的クライアント登録(DCR)そのものは非推奨になり、Client ID Metadata Documents(CIMD)が標準の方法になった

mix-up攻撃とは、複数の認可サーバーを使う環境で、攻撃者が認可レスポンスをすり替えてトークンを窃取する攻撃です。

移行が必要になる変更の一覧

公式ブログは、この版に互換性のない変更が含まれると明記しています。互換性に影響する変更は1つではありません。該当する実装があるかを、次の表で確認してください。

変更 影響を受ける実装 対応
initialize のやり取りと Mcp-Session-Id の廃止 セッションIDに状態を紐づけているサーバー ツールが発行する明示的なハンドルを、引数で受け渡す設計に変える
サーバーからのリクエストをMRTRに変更 ユーザーへの確認などをサーバーから送っている実装 input_required の結果を返し、再送を受け取る形に変える
HTTPのGETエンドポイントと resources/subscribe の廃止 変更通知を受け取っているクライアント subscriptions/listen に切り替える
ping・logging/setLevel・notifications/roots/list_changed の削除 これらを呼び出している実装 呼び出しをやめる。ログの水準はリクエストごとに _meta で指定する
SSEの再開機能(Last-Event-ID)の削除 切断後の再開に頼っているクライアント 新しいリクエストIDで送り直す
Mcp-Method / Mcp-Name ヘッダの必須化 Streamable HTTPのクライアント POSTリクエストにヘッダーを付ける
Tasksが拡張に移行 2025-11-25版のTasksを使う実装 新しい手順(tasks/get など)に移行する
リソースが無いときのエラーコードを -32002 から -32602 に変更 -32002 を数値で直接判定しているクライアント -32602 を判定に加える。仕様は、互換性のために -32002 も受け付けることを推奨

公式のTypeScript・Python・Go・C#のSDKは、公開日の時点で2026-07-28版に対応したと発表されています。SDKを使っている場合は、各SDKの移行ガイドに沿って更新します。

非推奨になった機能

非推奨は、すぐに使えなくなるという意味ではありません。仕様には残りますが、将来の削除が予定されている状態です。

非推奨になった機能 代わりの方法 削除が可能になる時期
Roots ツールの引数、リソースURI、サーバーの設定でフォルダやファイルを渡す 2027年7月28日以降に公開される最初の版
Sampling LLMの提供元のAPIを直接利用する 同上
Logging stdioでは標準エラー出力に書く。監視にはOpenTelemetryを使う 同上
動的クライアント登録(DCR) Client ID Metadata Documentsを使う 同上
HTTP+SSEトランスポート Streamable HTTPに移行する 公式の一覧を参照

非推奨から削除までには、最低12か月の期間が設けられています。時期は「削除が可能になる」最も早い時点で、実際の削除はそれより後になる場合があります。新しい実装では採用を避け、既存の実装は期間内に移行を計画してください。

MCPに関するよくある質問

Q. MCPとは、簡単に言うと何ですか?

MCP(Model Context Protocol)は、AIアプリを社内システムや外部サービスにつなぐための共通規格です。公式ドキュメントは「AIアプリケーションにとってのUSB-Cポート」と表現しています。接続の作法が揃うため、一度作った連携を、MCPに対応した別のAIツールからも使えます。

Q. MCPとAPIは何が違いますか?

APIは、個々のサービスがそれぞれ決めた呼び出し方です。MCPは、AIアプリが「このサーバーでは何ができるか」を一覧で確認し、実行を依頼するまでの作法を揃えた規格です。MCPサーバーの内側で既存のAPIを呼び出す構成も取れるため、APIを置き換えるものではなく、AIアプリとの間に共通の窓口を置くものと考えると整理しやすくなります。APIやRAGとの違いは、MCPサーバーの解説記事で詳しく扱っています。

Q. MCPを使うのにプログラミングは必要ですか?

公開されているMCPサーバーを接続するだけであれば、AIツールの設定画面や設定ファイルで行えます。自社のデータや業務システム向けにMCPサーバーを新しく作る場合は、開発が必要です。公式のSDKはTypeScript・Python・Go・C#などで提供されています。設定の手順は、Claudeアプリでの使い方とClaude Codeでの設定を参照してください。

Q. MCPの最新バージョンはどれですか?

2026年9月28日時点で、公式サイトが現行(Current)としている版は2026-07-28です。2026年7月28日に正式公開されました。1つ前の版は2025-11-25です。MCPの仕様は、互換性に影響する変更が最後に入った日付を版の名前にしています。

Q. MCPはClaude以外のAIツールでも使えますか?

使えます。MCPはAnthropicが公開した規格ですが、2025年12月9日にLinux Foundation傘下のAgentic AI Foundationへ寄贈され、特定の企業に依存しない形で管理されています。公式ドキュメントは、対応例としてClaude・ChatGPT・Visual Studio Code・Cursorなどを挙げています。対応する機能の範囲はツールごとに異なるため、各ツールの公式ドキュメントで確認してください。

Q. MCPの利用に費用はかかりますか?

MCPの仕様と公式のSDKは、オープンソースとして公開されています。費用がかかるのは、接続するAIツールや外部サービスの利用料と、自社でMCPサーバーを開発・運用する場合の工数です。AIツールの料金や、MCPを使えるプランの範囲は、各ツールの公式ページで確認してください。

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まとめ

MCP(Model Context Protocol)とは、AIアプリケーションと外部システムをつなぐオープン標準規格です。要点を整理します。

  • 定義: AIアプリと外部システムを接続するオープン標準。公式は「AIアプリにとってのUSB-Cポート」と表現する
  • 便利になる点: 必要な連携の数がM×NからM+Nに減り、AIツールを替えても連携を使い回せる
  • 仕組み: ホスト・クライアント・サーバーの3者構成。サーバーはTools / Resources / Promptsの3プリミティブを公開する
  • 経緯: 2024年11月25日にAnthropicが公開。2025年12月9日にLinux Foundation傘下のAgentic AI Foundationへ寄贈され、ベンダー中立の規格になった
  • 始め方: 既存のAIツールで公式のサーバーを試し、社内データを1つ読み取り専用で公開し、権限とログのルールを決める
  • 最新仕様: 現行は2026-07-28版(2026年7月28日公開)。ステートレス化、拡張機能の枠組み、認可の強化が主な内容で、互換性に影響する変更を複数含む
  • 注意点: 接続するサーバーを信頼できる提供元に限定し、最小権限で設計する

AI活用の主戦場は、単体ツールの使いこなしから 「社内のデータや業務システムとどうつなぐか」 へ移りつつあります。MCPはその接続部分の共通言語です。まずは自社で使っているAIツールの対応状況を確認するところから始めてみてください。


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参考・出典

いずれも2026年9月28日に内容を確認しました。




この記事で参照した外部情報

  1. Model Context Protocol 公式ドキュメント — What is MCP?modelcontextprotocol.io
  2. Model Context Protocol 公式ドキュメント — Architecture overviewmodelcontextprotocol.io
  3. Model Context Protocol 公式ドキュメント — Versioning(現行の版)modelcontextprotocol.io
  4. MCP Specification 2026-07-28 — Key Changes(変更履歴)modelcontextprotocol.io
  5. MCP Specification 2026-07-28 — Deprecated Features(非推奨の一覧)modelcontextprotocol.io
  6. MCP Specification 2026-07-28 — Resourcesmodelcontextprotocol.io
  7. MCP Specification 2026-07-28 — Toolsmodelcontextprotocol.io
  8. MCP Blog — The 2026-07-28 Specificationblog.modelcontextprotocol.io
  9. MCP Blog — The 2026-07-28 MCP Specification Release Candidateblog.modelcontextprotocol.io
  10. MCP Blog — MCP Apps – Bringing UI Capabilities To MCP Clientsblog.modelcontextprotocol.io
  11. MCP Blog — MCP joins the Agentic AI Foundationblog.modelcontextprotocol.io
  12. Anthropic — Donating the Model Context Protocol and establishing the …anthropic.com
  13. Anthropic — Introducing the Model Context Protocolanthropic.com
  14. TechCrunch — OpenAI adopts rival Anthropic’s standard for conne…techcrunch.com
  15. TechCrunch — Google to embrace Anthropic’s standard for connect…techcrunch.com

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