Encyclopedia BritannicaがOpenAIを提訴|企業がAI著作権訴訟から学ぶ3つの教訓

OpenAI 著作権訴訟 企業 影響のイメージ画像

Encyclopedia Britannica等がOpenAIに著作権訴訟を提起し、日本企業のAI活用にも著作権リスクが波及しています。

  • 要点1: 2026年3月13日、Encyclopedia BritannicaとMerriam-WebsterがOpenAIを提訴。約10万件の記事を無断学習したと主張
  • 要点2: 日本でも読売・朝日・日経がPerplexity AIを提訴(各2億円超)。AI著作権訴訟は日本でも現実のリスク
  • 要点3: AI出力物を業務利用した企業・担当者が著作権侵害の責任を問われる可能性がある

対象: ChatGPT等の生成AIを業務利用している経営者・DX推進担当者

今日やること: 社内AIガイドラインに「出力物の著作権チェック」の項目を追加する

2026年3月13日、Encyclopedia BritannicaとMerriam-Websterがニューヨーク連邦地裁にOpenAIを提訴しました。約10万件の記事・辞書定義がChatGPTの学習に無断使用されたと主張する本訴訟は、AI著作権問題の新たな局面を告げています。

「これはOpenAIの問題だ」と思われた方もいるかもしれません。しかし、日本でも主要紙がAI企業を提訴し始めており、生成AIを業務利用する企業にとって著作権リスクは「他人事」ではなくなっています。

この記事では、今回の訴訟の概要・日本企業への影響・そして今すぐ取るべき3つのリスク対策を解説します。

Encyclopedia BritannicaとMerriam-WebsterがOpenAIを提訴——何が起きたのか

今回の訴訟は、長年の著作権侵害に対する知識・教育系コンテンツ業界の反撃として注目されています。その内容を整理します。

訴訟の核心:「10万件の記事を無断学習」

提訴は2026年3月13日、ニューヨーク南部地区連邦地裁(SDNY)に行われました。原告のEncyclopedia BritannicaとMerriam-Webster(辞書出版社)は次の3点を主張しています。

主張 内容
無断学習 Britannicaの約10万件の記事をChatGPTの学習データとして無断使用した
著作物の再現 ChatGPTがBritannicaの記事をほぼ逐語的(near-verbatim)に出力している
誤引用 ChatGPTがハルシネーション(事実と異なる情報)をBritannicaの見解として誤引用している

特に注目すべきは第三の主張です。誤情報がBritannicaの名前と紐づいて拡散されることで、ブランドへの信用毀損が生じているという点は、著作権侵害に加えて商標権侵害の訴えにもつながっています。

OpenAIの主張:フェアユース(著作権の公正利用)

OpenAI広報は「当社のモデルはイノベーションを促進しており、公開データを学習に使用している。フェアユースの原則に基づいた適法な利用だ」と声明しています。

フェアユースとは、著作物を一定の条件下で許諾なく利用できる米国著作権法の原則です。ただし、フェアユースの成否は①目的・性質、②著作物の性質、③使用量、④著作権者の市場への影響の4要素で判断されます。Britannica等は「ChatGPTが記事を代替する形で生成することで、自社サイトへの訪問者が減少する」と主張しており、第④の要素で争われることになります。

なお、OpenAIが被告となる訴訟はこれが初めてではありません。ニューヨーク・タイムズほか16社による多数当事者訴訟(MDL)が同じくSDNYで係争中であり、本格的な判決は2026年夏以降が見込まれています。

なぜ今これが重要なのか——AI著作権訴訟が急増する背景

今回の提訴が単発ではなく、グローバルなトレンドの一部であることを理解する必要があります。

米国での相次ぐ提訴

米国では、AIの学習データをめぐる著作権訴訟が急増しています。主要な動きを確認しましょう。

時期 原告 被告 争点
2023年 Getty Images Stability AI 画像学習データの無断使用
2023年末 ニューヨーク・タイムズ OpenAI/Microsoft 記事の無断学習・再現
2024〜2025年 AP通信、著作家ギルドほか16社 OpenAI MDL統合訴訟
2026年3月 Encyclopedia Britannica/Merriam-Webster OpenAI 辞書・百科事典記事の無断学習

一連の訴訟の中でも特に注目されるのが、ニューヨーク・タイムズ訴訟を中心とするMDL(多数当事者訴訟)です。2025年11月には、裁判所がOpenAIに対して2,000万件の匿名化されたChatGPTチャットログの開示を命じており、AIが実際にどの程度著作物を再現しているかが法廷で明らかになりつつあります。

日本でも始まった著作権訴訟

「日本の話ではない」——そう思われたとすれば、認識を改める必要があります。日本でも2025年以降、AI著作権訴訟が現実化しています。

  • 2025年8月: 読売新聞がPerplexity AIに著作権侵害訴訟を提起(日本初の主要メディアによるAI著作権訴訟)
  • 2026年初め: 朝日新聞・日本経済新聞がPerplexity AIを東京地裁に提訴。各社2億円超の損害賠償を請求

Perplexity AIは、記事をスクレイピングしてAI要約を提供するサービスです。ユーザーが記事の要約を無料で得られることで、新聞各社の読者が公式サイトを訪れなくなることを問題視しています。

ポイントAI著作権訴訟は「OpenAI vs 欧米メディア」の構図から、「日本企業 vs AI企業」という構図へと拡大しています。日本のビジネスパーソンにとっても、AI著作権問題は直視すべき課題となっています。

日本企業のAI活用に与える影響——リスクは「他人事」ではない

AI開発会社が訴えられていても、自分たちには関係ない——そのような理解は誤りです。生成AIを業務利用する企業も著作権リスクを負う可能性があります。

日本の著作権法とAI学習——現行の保護範囲

日本の著作権法第30条の4は、情報解析(機械学習)を目的とする著作物の利用について、原則として著作権者の許諾を不要としています。この規定が「日本はAI学習に寛容」と言われる根拠です。

ただし、この規定には重要な例外があります。「著作権者の利益を不当に害する場合」は許諾が必要とされており、米国のBritannica訴訟で争われているのもこの点に類似した論点です。

また2025年5月には「AI促進法(AI Promotion Act)」が国会で可決されており、今後はAI事業者に対するガイドラインや規制がさらに具体化される見通しです。

「出力物の利用」で責任を負うのは企業側

さらに重要な点があります。AIの学習データに関する著作権責任はOpenAI等のAI開発会社が負いますが、AIが生成した出力物を業務利用した場合、その著作権責任は利用した企業・担当者が負う可能性があります。

たとえば、ChatGPTで生成したコンテンツが既存の著作物に酷似していた場合、そのコンテンツを使用・公開した企業が著作権侵害を問われるリスクがあります。「AIが生成したから」は免責の理由にはなりません。

OpenAIは一部ユーザー向けに「著作権に関する法廷費用の負担」を約束していますが(ChatGPT EnterpriseおよびAPIユーザー向け)、すべての利用者が対象とは限らず、条件も変わり得ます。MicrosoftやGoogleも同様の「Copyright Shield」プログラムを提供していますが、適用範囲は限定的です。

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日本企業が今すぐ取るべき3つのリスク対策

訴訟の動向を見守るだけでなく、今日から実行できる対策があります。以下の3点を優先的に取り組むことをおすすめします。

対策1——社内AIガイドラインに「出力物の著作権チェック」を追加する

ChatGPTやCopilot等の生成AIを業務利用する際に、出力物をそのままコンテンツや資料として使用していないか確認してください。特に、マーケティング資料・ウェブコンテンツ・製品説明文として公開する場合、著作権チェックが必要です。

今日やること:

  1. 社内のAI利用ガイドラインを確認する(まだない場合は今週中に草案を作成する)
  2. ガイドラインに「AI出力物を公開する前に著作権類似性チェックを行う」条項を追加する
  3. 定型文・ブログ記事・画像等のカテゴリごとにリスクレベルを定義する

対策2——利用中のAIベンダーの「著作権補償プログラム」を確認する

主要AIベンダーが提供する著作権補償プログラムの内容を確認し、適用条件を把握しておきましょう。

ベンダー プログラム名 対象 内容
Microsoft Copilot Copyright Commitment Microsoft 365 Copilotユーザー 著作権侵害訴訟の法廷費用を負担
Google Generative AI Indemnification Cloud顧客・Workspace顧客 一定条件下で著作権訴訟に対応
OpenAI Copyright Shield Enterprise/APIユーザー 法廷費用の負担を約束

いずれのプログラムも、利用規約の範囲内での使用が前提です。プロンプトに既存の著作物をそのまま貼り付けて生成させるような使い方は対象外になる場合があります。

対策3——学習データの透明性を確認し、ライセンス済みデータを優先する

AIベンダーを選定する際、学習データの出所・ライセンス取得状況を確認することがリスク軽減につながります。

今後は「ライセンス済みデータのみで学習したAI」というセールスポイントを持つベンダーも増えてくると予想されます。特に出版・メディア・クリエイティブ領域での著作権リスクが高い業種では、この点を選定基準の一つに加えることをおすすめします。

今後の展望——AI著作権問題はどこへ向かうのか

AI著作権訴訟の帰趨を決める重要な転換点として、2つの動きが注目されます。

1. NYT vs OpenAI訴訟の判決(2026年夏以降)

SDNYで進行中のMDL訴訟では、フェアユースに関する判断が2026年夏以降に下される見通しです。この判決がAI学習データの著作権基準を実質的に定める「前例」となる可能性があります。OpenAIに不利な判断が下された場合、AIツールのコスト・利用規約・機能に大きな変化が生じる可能性があります。

2. 日本のAI規制の具体化

日本では2025年5月に成立したAI促進法を受け、内閣府・総務省・経産省が事業者向けガイドラインの整備を進めています。現在は任意規制が中心ですが、2026〜2027年にかけて義務化が進む可能性もあります。特に「学習データの開示・透明性」に関する要件は、企業の調達・選定基準にも影響を与えるでしょう。

よくある質問

Q. OpenAIの著作権訴訟は私たちの会社に直接関係しますか?

直接の被告ではありませんが、無関係とはいえません。ChatGPT等の生成AIが著作権侵害で訴えられる状況は、AI出力物を業務利用する企業にとってもリスクです。AIが生成したコンテンツを公開・使用した結果、類似著作物の権利侵害が発生した場合、責任を問われるのはAI開発会社ではなく、利用した企業・担当者です。社内ガイドラインの整備と著作権チェックの習慣化が重要です。

Q. ChatGPTで作成したコンテンツの著作権はどこにありますか?

2026年現在、日本の著作権法では「人が創作的に関与していないAI生成物」には著作権が発生しないとされています。一方、人が積極的にプロンプトを工夫・編集することで創作的関与が認められれば、著作権が生じる可能性があります。ただし、生成物が既存の著作物と酷似していれば、著作権侵害になりえます。

Q. 日本の著作権法では、AIの学習データ利用は許可されていますか?

著作権法第30条の4により、情報解析目的の著作物利用は原則許諾不要です。ただし、「著作権者の利益を不当に害する場合」は例外です。今後の法改正・判例によって解釈が変わる可能性もあるため、動向の把握が必要です。

まとめ

2026年3月、Encyclopedia BritannicaとMerriam-WebsterがOpenAIを著作権侵害で提訴しました。この訴訟は、AIの学習データをめぐる世界規模の法的争いの新たな章です。

日本企業にとって重要なポイントを振り返ります。

  • AI著作権訴訟はグローバル化: 米国だけでなく、日本でも読売・朝日・日経がAI企業を提訴している
  • 利用企業も無関係ではない: AI出力物の著作権責任は、利用した企業・担当者が負う可能性がある
  • 今すぐできる対策は3つ: ①社内ガイドラインへの著作権チェック追加、②ベンダーの補償プログラム確認、③学習データの透明性確認

AI活用の恩恵を最大化しながらリスクを最小化するには、法的・倫理的な観点を含めた社内体制の整備が不可欠です。「まだガイドラインがない」という企業は、今週中に第一歩を踏み出すことをおすすめします。

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この記事の監修者

川島陸

株式会社Nexa 代表取締役

川島 陸

一橋大学経済学部卒業後、フォーティエンスコンサルティング株式会社(旧 株式会社クニエ)にて法人向けAI導入支援等を経験。独立後、AI系メディア運営やDify/n8nの導入支援を経て、株式会社Nexaを創業。法人向けAI研修・AI導入支援・AI関連メディア運営を手掛ける。

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