CopilotがGPT×Claude同時活用——マルチモデルAIで調査品質13.8%向上

Microsoft 365 Copilot マルチモデル GPT Claudeのイメージ画像

Microsoft 365 CopilotがGPTとClaudeを同時起動するマルチモデルAIへ進化、調査品質が13.8%向上。

  • 要点1: Critique機能でGPTが草稿生成→Claudeが事実・網羅性・引用を評価する2段階プロセスを実現
  • 要点2: DRACOベンチマークでOpenAI・Google・Perplexity・Anthropic単体のツールを上回るスコアを達成
  • 要点3: M365 Frontierプログラムで即日利用可能、E7プランの一般提供は2026年5月1日開始

対象: Microsoft 365を導入済みの企業のDX推進担当者・情報システム部門・経営者

今日やること: Frontierプログラムへの参加資格を確認し、社内のAI活用担当者にCritique・Council機能の存在を共有する

この記事の著者
川島陸

株式会社Nexa 代表取締役川島 陸

一橋大学経済学部卒業後、フォーティエンスコンサルティング株式会社(旧 株式会社クニエ)にて法人向けAI導入支援等を経験。独立後、AI系メディア運営やDify/n8nの導入支援を経て、株式会社Nexaを創業。法人向けAI研修・AI導入支援・AI関連メディア運営を手掛ける。

Microsoft 365 Copilotが、OpenAI(GPT)とAnthropic(Claude)という競合するAIモデルを1つのプロンプトで同時活用する「マルチモデルAI」へと進化しました。2026年3月30日にMicrosoftが公式発表したこの機能強化は、企業のAIリサーチの質を根本から変える可能性を持っています。

「AIを業務に導入したが、出力の精度や信頼性に不満がある」——そう感じている企業のDX推進担当者にとって、今回のアップデートは注目に値します。

この記事では、新機能「Critique」と「Model Council」の仕組み、DRACOベンチマークによる客観的な効果検証、そして日本企業が今すぐ取るべき対応策を解説します。

Microsoft 365 Copilotに「Critique」と「Council」が追加——何が変わったのか

Microsoft 365 Copilotは、Microsoft社が提供するAIアシスタント機能です。Word・Excel・Teams・Outlookなど、Microsoft 365の各アプリに統合されており、文書作成や会議要約、データ分析などを自動化できます。

今回追加された「Critique」と「Model Council」は、Copilotの中でも特に深い調査・レポート作成を担う「Researcher(リサーチャー)エージェント」に実装された新機能です。

Critiqueの仕組み——GPTが書き、Claudeが読む2段階AI

Critique(クリティーク)とは、文字通り「批評・評価」を意味する機能です。具体的には、GPT(OpenAI製モデル)とClaude(Anthropic製モデル)が役割分担して調査レポートを作成します。

プロセスの流れ:

フェーズ 担当モデル 役割
生成フェーズ GPT(OpenAI) タスク計画→情報収集→初期草稿の作成
評価・改善フェーズ Claude(Anthropic) 草稿を専門レビュアーとして評価・修正

Claudeが行う評価は3つの軸で構成されています。

  • ソースの信頼性: 引用した情報源が権威あるものか、検証可能かを確認
  • レポートの網羅性: ユーザーの意図を完全にカバーしているか、独自の洞察を含むかを評価
  • 厳格な証拠根拠付け: 主要な主張が信頼性の高い出典と厳密に結びついているかを確認

「AIが生成した情報が正しいかどうか、もう1つのAIに確認させる」という発想は、LLM(大規模言語モデル)の精度向上における重要なアプローチです。単一のAIが自己チェックするより、設計思想の異なる別のAIが評価することで、見落としやバイアスを補完できます。

Councilの仕組み——2つのAIが競い合い、最良の答えを選ぶ

Model Council(モデルカウンシル)は、CritiqueとはAIの活用方法が異なります。GPTとClaudeが同時並行で、それぞれ独立した完全なレポートを生成します。

その後、専用の「ジャッジモデル」が両方のレポートを比較・評価し、主要な合意点と意見の相違点を統合したサマリーを作成します。ユーザーは「両AIが共通して指摘していること」と「それぞれが独自に見つけたこと」を一目で確認できます。

これにより、特定のAIが持つ偏り(例:特定の情報ソースを過信する傾向)をカバーし、より多角的な視点の調査結果を得られます。

なぜGPTとClaudeを「競合させる」のか——マルチモデルの本質

今回の機能強化の背景には、AI業界全体が直面している「単一モデルの限界」という課題があります。

単一モデルの弱点——なぜ1つのAIだけでは不十分か

GPTやClaudeをはじめとする大規模言語モデルは、膨大な学習データから高精度なテキストを生成できます。しかし、どのモデルにも固有の「盲点」や「傾向」が存在します。

単一モデルが抱える主な課題:

  • 確証バイアス: 生成したテキストの誤りを自己評価しても、同じバイアスで判断するため誤りを見落としやすい
  • 情報源の偏り: 特定の情報源や論調を過大評価する傾向が各モデルに存在する
  • カバレッジの限界: あるモデルが深く探索する領域と、浅く扱う領域がある

企業の重要な意思決定に使う調査レポートで、こうした偏りが入り込むことは大きなリスクです。

競合同士のAIを組み合わせることで何が変わるか

OpenAIとAnthropicは互いに競合するAI企業です。両社のモデルは、設計思想・学習データ・強化学習の方向性が異なります。その「違い」こそが価値を生みます。

GPTが見落としやすい点をClaudeが補完し、Claudeが弱い部分をGPTがカバーする。このクロスチェックにより、単一モデルを使い続けるよりも信頼性の高い出力が得られます。

ポイント「競合他社のAIを組み合わせる」という発想は、IT業界では珍しいアプローチです。しかしMicrosoftは、OpenAI(大株主として出資)とAnthropic(Microsoft Azureで提供)の双方と深い関係を持ちます。この独自のポジションが、今回のマルチモデル戦略を可能にしています。

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DRACOベンチマークで競合を凌駕——数字で見るCritique効果

Microsoftは、Critique機能の効果をDRACOベンチマークという業界標準の評価指標で公開しています。

DRACOとは「Deep Research Accuracy, Completeness, and Objectivity(深層調査の精度・網羅性・客観性)」の略称で、AIによる深い調査・リサーチ品質を測る業界標準の評価指標です。精度・網羅性・客観性・プレゼンテーション品質など複数の観点で総合評価します。

Critique導入による改善結果(DRACO):

評価項目 改善幅
分析の幅と深さ +3.33(最大の改善)
プレゼンテーション品質 +3.04
事実精度 +2.58
総合スコア +13.8%

この13.8%の改善により、Microsoft 365 CopilotのResearcherエージェントは、OpenAI・Google・Perplexity・Anthropicが単独で提供する深層リサーチツールを上回るスコアを達成しました。

各社が自社モデルのみを使うリサーチツールで競い合う中、MicrosoftはGPTとClaudeを組み合わせることで客観的な評価指標で首位を取ったことになります。


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Microsoft 365を使う日本企業はどうすべきか——今すぐ取るべき3つのアクション

日本企業においてMicrosoft 365は広く普及しています。Office製品のライセンスと合わせてM365を契約している企業は多く、Copilotの新機能は既存契約の延長線上で活用できる可能性があります。

① Frontierプログラムへの参加を検討する

Critique・Council機能は現在、Microsoft 365の「Frontierプログラム」(エンタープライズ顧客向け早期アクセスプログラム)で提供中です。

Frontierプログラムとは、Microsoftが大規模なCopilot・エージェント導入を推進する企業向けに設けた早期アクセス制度です。参加することで、一般提供前の最新機能をいち早く試験運用できます。

一般提供については、M365 E7プランとして2026年5月1日からの提供開始が発表されています。既存のM365ライセンスとの関係や移行コストについて、今のうちにMicrosoftパートナーや社内情報システム部門と確認を始めることをお勧めします。

② 社内のAI活用担当者がCritique・Council機能の特性を理解する

機能が利用可能になるまでに、担当者が仕組みを理解しておくことが重要です。

担当者が把握しておくべきポイント:

  • CritiqueはシーケンシャルAI(GPT→Claude)、CouncilはパラレルAI(GPT並行Claude)という違い
  • 両機能ともResearcherエージェントの中で動作する(Copilotの基本チャット機能とは異なる)
  • 出力精度が向上する一方、処理時間は従来より長くなる可能性がある

「AIが出力した内容をそのまま使う」という運用から、「AIがどのように情報を評価しているかを理解した上で使う」という運用への移行が求められます。

③ マルチモデルAIリテラシーを組織全体に広める研修の検討

今回のCopilot強化は、「AIは1つのモデルが答えを出す」という従来の理解を変えるものです。今後、マルチモデルAIは業界全体で標準的なアプローチになっていく可能性があります。

企業として必要なのは、こうした技術進化に対応できるAIリテラシーを組織全体で底上げすることです。ツールが進化するほど、「どのAIにどんな強みがあるか」「どう組み合わせると最適か」を判断できる人材が重要になります。

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Copilot Coworkとの関連——マルチモデル時代のMicrosoft戦略全体像

Critique・Council機能は、同じく2026年3月30日に一般提供が開始された「Copilot Cowork」と合わせて発表されました。

Copilot Coworkは、Microsoft 365内のAIエージェントがメール・Teams・ファイルなどを横断して業務タスクを自律的にこなす機能です。簡単に言えば「AIが人の代わりにM365上の複数のアプリをまたいで仕事を進める」仕組みです。

今回のMicrosoft発表の全体像:

機能 概要 提供状況
Copilot Cowork M365横断のAIエージェント機能 Frontierで即日提供
Critique GPT→Claudeの2段階リサーチ評価 Frontierで即日提供
Model Council GPT・Claude並行リサーチ Frontierで即日提供
M365 E7(一般提供) 上記機能を含む新ライセンス 2026年5月1日〜

Microsoftが競合するOpenAIとAnthropicの双方と提携し、それぞれのモデルの強みを組み合わせる戦略は、「最強のAIを自前で作る」ではなく「最強の組み合わせを提供する」という差別化を意味します。

企業がどのAIベンダーと取引するかより、「どのプラットフォームがベストな組み合わせを提供するか」を評価する時代になりつつあります。

よくある質問

Q. Critique・Council機能はいつから使えますか?

2026年3月30日時点でMicrosoft 365 Frontierプログラム参加企業向けに提供されています。一般ユーザー向けにはM365 E7プランとして2026年5月1日からの提供開始が予定されています。日本での提供も同スケジュールでの対応が見込まれます。

Q. DRACOベンチマークとは何ですか?他のベンチマークとの違いは?

DRACOは「Deep Research Accuracy, Completeness, and Objectivity」の略で、AIによる深層リサーチの品質を測る業界標準の評価指標です。事実精度・情報の網羅性・客観性・プレゼンテーション品質など複数の軸で総合的に評価します。一般的なAIベンチマーク(MMLU等の知識テスト)とは異なり、企業が実際に使うリサーチ・調査業務に特化した指標です。

Q. M365を導入している企業が今すぐできることはありますか?

現時点では以下の2点が実践可能です。①社内のM365管理者にFrontierプログラムの参加申請について確認する、②AI活用担当者がCritique・Council機能の仕組みと特性を把握しておく。機能が一般提供される前に組織内での理解を深めておくことが、スムーズな導入につながります。

Q. GPTとClaudeを組み合わせた場合、どちらの回答が最終的に採用されるのですか?

Critiqueの場合、GPTの草稿をClaudeが評価・改善した最終版が出力されます。Model Councilの場合は、専用ジャッジモデルが両者のレポートを比較・統合した要約を作成します。ユーザーは「両AIの合意点」と「相違点」を確認した上で、必要に応じて個別レポートも参照できます。

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まとめ

Microsoft 365 Copilotの今回のアップデートで、企業のAIリサーチは新しい段階に入りました。

  • Critique機能: GPT(OpenAI)が草稿→Claude(Anthropic)が評価・改善するシーケンシャルプロセス
  • Model Council: 両AIが並行してレポート生成し、ジャッジモデルが統合
  • DRACOベンチマーク: 13.8%改善。単体ツールで競合他社を凌駕
  • 提供状況: Frontierプログラムで即日、一般提供はM365 E7として2026年5月1日〜

日本企業が取るべきアクションは明確です。Frontierプログラムへの参加を検討しつつ、今のうちに社内のAI活用担当者がマルチモデルAIの仕組みを理解し、組織全体のAIリテラシー向上に着手することです。

ツールが進化するほど、「どのAIにどんな強みがあるか」を判断できる人材が企業の競争力を左右します。


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